
空を自由に飛びたい。
ギリシア神話のイカロスを例に挙げるまでもなく、古代から人間が夢に思ってきたことです。
その思いは科学技術の進歩とともに実現してきました。
気球、飛行船、複葉機、プロペラ機、ジェット機、そしてついにはロケットで月にまで人間は到達しました。
しかし、飛行機で空を飛ぶのと、生身の体で自由に空を飛ぶことは同じではありません。
ドラえもんのタケコプター、ドラゴンボールの舞空術、バスタード!の呪文「黒烏嵐飛 / レイ・ヴン」などコミックやアニメの世界では生身で自由に飛ぶことを様々な方法で夢見てきました。
しかし、ついにその夢が誰でも手に入るところに来るかもしれません。
この写真はニュージーランドの企業、マーチンエアクラフト社が発表した製品です。6月上旬に欧米で一斉に報道されました。
1984年のロスアンゼルスオリンピックの開会式で世界を驚かせたロケットベルトは航続時間がわずか30秒程度でした。これは燃料に過酸化水素を使用した危険なもので、実用化には至りませんでした。
このマーチン・ジェットパックは実はジェットエンジンも、ジェット噴射も使用していません。ガソリンを使用するレシプロエンジンでファン(プロペラ)を回して飛行します。レシプロエンジンで2つのファンを回して浮上、飛行するのでホバークラフトに近い機体です。開発期間は30年、費用は700万$以上を投資したそうです。
ガソリン使用のレシプロエンジンとファン(プロペラ)という、いわゆる「枯れた技術」でこのような素晴らしい製品を作り上げた着眼点、発想が素晴らしいと思います。
社長のグレン マーチン(Glenn Martin)は1981年にこの飛行装置の概念を思いつき、30年間にわたる開発で実用化にあと1歩のところまで来ました。小さな会社なので奥様と息子さんも開発に携わっていたそうです。
マーチン社長および役員※一番上がマーチン社長です。
マーチン家の人々
家族とスタッフの努力でこの画期的な製品ができたと思うとなんだか微笑ましい感じがします。公式サイト「会社案内」のメニューでも家族紹介が役員紹介より上に置いてあります。本当に家族を愛しているのだと思います。
マーチン・ジェットパックの主な性能・諸元は次のとおりです。
ストラップ式一人乗り飛行機械 Martin Jetpack
価格 10万$(800万円)
乾重量 113.4kg(総重量242.6kg)
2リッター V型4気筒 2ストロークエンジン(独自開発)
最大出力 200馬力 6000rpm
燃料タンク 19リットル
滞空時間 30分
航続距離 50km
最高時速 100km/h
最高高度 2400m
上昇率 240m/分
パイロット体重範囲 63kg~109kg
講習15時間で操縦可能
公式サイトの技術情報はこちら。
アメリカでの販売を想定し、米国航空法の超軽量飛行機の要件を満たすように開発を進めているということです。超軽量飛行機に該当すると、免許なしで操縦ができるためです。発売は2012年の予定ですから、早ければ来年にも入手可能です。
高給車1台程度の価格で、個人が自由に空を散歩できるようになるかもしれません。
楽しみですね。
5月21日に行われたテスト飛行の動画はこちら。
機動性が良くわかる動画。
【関連リンク】
マーチン・エアクラフト社(Martin Aircraft Company Limited)
マーチン・エアクラフト社投稿動画一覧
Youtube ロサンゼルスオリンピック開会式 ロケットベルト
今回の記事を書くのに欧米のニュースサイトをかなり見ましたが、どこも部分的にしか記事がないので必要な情報をまとめるのに結構時間がかかりました。また欧米は単位にヤード・ポンド式で表記しているので換算も面倒でした。単位の換算はここが便利なので使っています。
個人飛行機具はロケットベルトをはじめ、ロケットマン(JetMan)、水噴射式ジェットパック「Jetlev」、ムササビWing Suit、日本製オートジャイロなど色々面白いものがありましたので折を見てまとめます。
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