アメリカが戦争を継続的に行う理由は次のようなものが挙げられます。
・世界の警察としての国際社会の要請
・軍産複合体と政府との関係
・古い兵器の処分と新兵器の実験
・石油資源確保
このうち特に軍産複合体と呼ばれる、軍事産業とアメリカ政府の関係については、近年日本でも良く知られています。
わかりやすく解説をした書籍も多数出版されています。
戦争中毒―アメリカが軍国主義を脱け出せない本当の理由
まんが現代史 アメリカが戦争をやめない理由 (講談社現代新書)
軍産複合体のアメリカ―戦争をやめられない理由
ここではそうした視点とは別の日本人はほとんど知らないであろう、アメリカの国民が戦争を必要としている理由を書いていきたいと思います。
以前、「アメリカとイギリスの特別な関係」の記事を書いた時に、米英の小説を大量に読んだことを書きました。
その中で、一般的なアメリカ人、特に保守的な田舎町での戦争に関する感覚に触れて少し驚きました。
アメリカでは大人として認められるために、通過儀礼として志願して戦争に行く必要がある、ということです。
一般的な国民にこのような意識があるため、軍産複合体、経済の情況とは全く別の部分でも、アメリカは最低でも10年に一度戦争を行う必要があります。平和な時代が続くと、若者が戦争に行く機会が得られないからです。
ポポポポポ( ゚д゚)゚д゚)゚д゚)゚д゚)゚д゚)ポカーン…
日本では「戦争は悪いこと」と小学生のころから繰り返し繰り返し教育が行われ、マスコミも「戦争は悪いこと」と口を揃えて大合唱をしています。日本の同盟国である、アメリカ人のこのような戦争に対する感情が表に出ることは絶対にありません。
しかし、アメリカ人の視点でアメリカ人が書いた小説には随所にこの背景が描写されています。
祖父は太平洋戦争、父は朝鮮戦争、叔父はベトナム戦争、兄は湾岸戦争にそれぞれ志願して従軍し手柄を立てた話を、アメリカの子供たちは小さいころから聞かされて育ちます。
アメリカにとって戦争は正義であり、志願して戦争に行くのは国民の義務であり、誇りだという国民感情。
アメリカ合衆国の建国自体が、イギリスとの血みどろの独立戦争を戦い抜いて勝ち取ったものです。その気持ちが常に国民の根底にあるのでしょう。
特に田舎町だと、戦争に参加してないと地域社会からも一人前の大人として認められない、という現代の日本人からは想像できないような事情もあります。
アメリカにとって戦争は正義であり、経済上の理由からも必要なことであるけれども、戦争で兵士が死ぬことはあってはならない、という考えが出てくる所以です。
国民の通過儀礼としての戦争で、後遺症の残らない負傷はまだ良い、名誉の負傷で勲章も授与されるけれども、死んでしまっては本末転倒というわけです。
それを実現するために、兵器のハイテク化、兵士装備のハイテク化、無人兵器の開発を積極的に行い、死傷者、特に死者を減少させることに躍起になっているわけです。
先のイラク戦争で米兵の捕虜に対する虐待がニュースになりました。虐待したのは「州兵」の若者であり、まさに通過儀礼のために戦争に参加した若者がアメリカ的なノリで引き起こした事件だと思います。ニュースで虐待の写真を見ましたが、その思いを確信しました。
アメリカ国民の戦争に対する感情をまとめて箇条書きにすると次のようになります。
・若者が一人前の大人として認められるためには志願して戦争に参加する必要がある。
・戦争で手柄を立てて勲章がもらえればなお良い。帰国後の自慢話の種になる。
※激戦地に居た、ということでも可。尾ひれをつけて自慢話の種になります。
・戦争に参加することで死んではならない。(本末転倒である。)
・アメリカ人は子供の頃から、祖父や叔父、父、兄などから戦争の体験談を聞かされて育ち、
男子であれば自分も戦争に行くのが当たり前であると思っている。
・若者が若いうちに戦争に参加するために最低でも10年に一度、戦争をする必要がある。
・戦争がない期間が続くと、国民から政治家に対し戦争開始の圧力が高まり選挙にも影響する。
上記はあくまで米英の小説家の目から見た世界観によります。小説は作者の世界に対するフィルターを通して作品が描かれますので、マスコミや書籍でも書かれないような国民感情が現れるのが面白い。
また小説には軍人が手柄を立てるためには戦争が必要であり、そのためにも定期的に戦争が必要であるといった事情も書かれています。Wikiによれば2006年の時点で、アメリカの就業人口における軍人の割合は1%、総人口に対しては0.5%、144万人です。この人たちが手柄を立て、昇進するのに戦争が必要だというわけです。
政治経済、軍産複合体などとは別の国民感情として、アメリカが戦争を必要としているということは意外と知られていないと思いますので、ちょっと書いてみました。
内容の真偽を含め、信じる、信じないはあなた次第です・・・。
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