2011年08月06日

WindowsXPの謎:デスクトップの「草原.bmp」は実在した。


2011年7月末、WindowsXPの世界シェアがついに50%を下回ったというニュースが流れました。2002年に発売されたWindowsXPは、98系の使いやすさと、NT系の堅牢さを併せ持つ大変優れたOSであり、シェアが低下したとはいえ、今でも世界中で多くの人たちに使われています。

WindowsXPを起動すると、まず現れるのがこの画面です。青い空に白い雲が浮かぶ、美しい緑の草原です。

実はこれ、CGではなく実在の風景を写したものです。

この場所がどこかは2002年の発売当時から様々な憶測がなされてきました。

フランス、イングランド、スイス、ニュージーランドの北オタゴ地方、南東部のワシントン、アイルランドの南西ケリーなどが候補に上げられました。また、Microsoftの複数のエンジニアでさえ、写真はデジタル加工だと思っていました。

2008年頃、ネット上でこの場所がわかったと、話題になりました。

場所はアメリカ合衆国カリフォルニア州ソノマ郡の南東ソノマ・バレー(Sonoma Valley)という場所です。下の地図をズームした中心地が撮影場所です。

大きな地図で見る

撮影した場所もピンポイントで特定されておりストリートビューはこんな感じ。まさに同じ風景が広がっています。この路肩の鉄条網のところからカメラを突き出して撮影されました。

写真を撮影したのはプロカメラマンのチャールズ・オレア(Charles O'Rear )氏。1941年生まれ。

オレア氏は1970年代から環境保護庁の「ドキュメリカ」"DOCUMERICA"のプロジェクトに参加しました。ドキュメント・アメリカからの造語でしょうか。アメリカの環境保護庁が、1972年から1977年まで行ったプロジェクトで、環境問題を写真として保存するために行われました。約70名の有名写真家と契約をしアメリカの様々な環境問題を写真として記録しました。この記録は国立公文書館のサイトで見ることができます。日本人では、史上初めてアメリカ大統領の公式カメラマンとなった洋一R.岡本氏(1915-1985)が参加しています。

オレア氏はまた、ナショナル・ジオグラフィック誌の写真を25年以上も撮影しています。欧米ではナショジオに写真が掲載されることは、写真家としてのステータスにもなっています。多数読んだ欧米の小説の中で、若手カメラマンがナショナル・ジオグラフィックの専属カメラマン採用を目指しているところを陰謀に巻き込まれるストーリーのものがありました。25年以上もナショジオに写真が掲載されるというのは、一流の写真家であることの証明でしょう。

1978年からはワイン醸造に興味を持ち、ナパバレーに移住し撮影を始めます。その後は世界中のワイン醸造を撮影し、多数の写真集を刊行しています。公式サイトで美しい写真を多数見ることができます。

   

同じ丘の別カットの写真も複数あります。

WindowsXPのデスクトップとなった写真は1996年に撮影されました。

なぜ、丘はブドウ畑ではなく草原なのでしょうか?

実は1990年代初頭にブドウの害虫であるフィロキセラ:ブドウネアブラムシ(Phylloxera)が発生して、害虫対策のため周辺のブドウの木をすべて引き抜いていたためです。害虫がいなくなるまでの数年間、丘は緑の草原となっていました。

その短い期間の、冬の嵐の晴れ間にこの写真は撮影されました。

オレア氏は自宅からほぼ毎日、ナパバレーに通い写真を撮影していました。1996年の冬、おそらくは1月のある日、自動車で高速121号線を走っていると、急激に変わる天候の合間に衝撃的な光景を目にしました。車を路肩に寄せ、ビュー・カメラを鉄条網の向こうに押し出し、マニュアル操作で撮影をしました。撮影後は再び雨が降り出したことでしょう。

その1枚の写真は今ではホワイトハウス、クレムリンはもちろん世界中の隅々まで、あらゆる民族、あらゆる国の人々が目にすることとなりました。世界中で最も多くの人が目にした写真ではないでしょうか。

オレア氏の写真は2億ドルをかけたWindowsXPの広告キャンペーンに大いに貢献しました。

マイクロソフトにとって青は1995年には既に重要なブランドの色でした。雲と空は様々な製品のアイデンティティーと関係性を表す共通するテーマでした。雲と空は機会と可能性を表しています。

WindowsXPではクラウド(雲)のテーマを継続しながら、空を大地に接触させました。地平線は画像にスケール感を与えます。そこにいることを想像することが可能になります。緑もユーザーインターフェースと商標に関する2番目に重要な色でした。
  

オレア氏の写真はこれらのマイクロソフトのコンセプトに完全に一致していました。オレア氏はインタビューの中で、写真家としての生活でこれまでで最大の報酬を受け取った、と述べています。

この画像はMicrosoftとの守秘義務契約でオレア氏の名前はどこにもなく、「Bliss(草原).bmp」となっていました。後継のWindowsVista、Windows7が発売され、守秘義務契約の期間が切れたのでしょうか。オレア氏はメディアの取材も受けています。

オリジナル写真とオレア氏が一緒に写った写真があります。オリジナルの写真には上空に小さくタカが映っているそうです。


こちらはまったく同じ位置を2006年11月に撮影。ほぼ10年後の写真です。ブドウの木が成長しており、晩秋なので葉が枯れています。秋のブドウ畑も美しい。Wikipedeから最大3,200 × 2,400 pixels, file size: 4.75 MBのjpeg画像もダウンロードできますので壁紙にするのも面白いかもしれません。


2枚並べると良くわかります。完全に一致します。

左:1996年撮影 WindowsXP「草原.bmp」  右:2006年11月撮影(wikiより)

これは2010年5月2日に撮影された新しい画像です。新緑の若葉が美しい。ここにオリジナル画像(1920×1200, 1.9MB)があります。

この丘の畑から採れたブドウ限定でワインを醸造し、丘の写真をラベルにしWindowsXPブランドで売り出したら、結構プレミアが付くと思います。誰かやらないのかなw この記事の一番下にカリフォルニア州ソノマ・バレー産のワインのリンクを貼りました。この写真の丘を含む地域で採れたブドウで作られたワインです。

誰でも知っている、WindowsXPの画像にも興味深い事実がありました。

今回の記事も日本語サイトは良い情報がなく、英文サイトの情報をもとに作成しました。短いけど結構良い記事になったと思います。

【関連リンク】
Bliss (image) - Wikipedia(英文) まずはここから。
After Microsoft Wikiにある写真の撮影者のブログ。
Wine Photography オレア氏公式サイト。多数の美しい写真。
Charles O'Rear - Wikipedia オレア氏の略歴
21st Century Bliss 2010年5月2日撮影の写真。オリンパスE-3使用。

【カリフォルニア州 ソノマ・バレー産のワイン】※20歳未満閲覧不可

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posted by 桜 真太郎 at 07:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 伝説・ミステリー
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