
※英BBC-TVが放映した画像
クロノバイザー "Chronovisor”、キリスト教の聖職者が開発した過去を見る装置です。この装置は映像だけではなく、音声も聞くことができます。
2003年4月号(No.269)のムーに記事が出たのが最初で最後でずーっと気になっていましたので、ちょっと調べてみました。ムーには装置の概要が記載されていなかったので、仕組みも判らず、何より音声をどうやって聞くのかが気になっていました。
クロノバイザー(またはクロノスコープ)は過去から画像と音声をキャプチャして再現できるデバイスです。
2002年にフランソワ・ブリュヌ(Francois Brune:司祭)が出版した著書、『Le nouveau mystere du Vatican ("The Vatican's New Mystery")』(新・バチカンの謎)により、存在が知られました。
開発したのはペッレグリーノ・アルフレド・マリア・エルネッティ(Pellegrino Alfredo Maria Ernetti)です。ロッカサントステファノで1925年に生まれ、サンジョルジョマッジョーレ島で1994年に没しています。神学者、言語学者、音楽学者(古風なキリスト教以前のポリフォニック)、科学者、エクソシストのイタリア人です。量子物理学の学位を持っていました。
16歳の時、ヴェネツィアのサンジョルジョマッジョーレのベネディクト会修道院に入り、亡くなる69歳までそこに所属していました。長年ヴェネツィア教区の公式なエクソシスト(悪魔祓い師)を務めたことでも有名です。悪魔祓いについての書籍「La catechesi di Satana
1960年代初頭、エルネッティはローマカトリック教会の僧侶および企画者の立場でこのデバイスの開発に携わっていたことをフランソワ・ブリュヌに述べています。
世界的に有名な12名の科学者が開発に携わりました。名前が判っている科学者は、エンリコ・フェルミ(Enrico Fermi)とウエルナー・フォン・ブラウン(Wernher von Braun)の二人がいます。
エンリコ・フェルミ(Enrico Fermi、1901年9月29日 ? 1954年11月28日)は、イタリア、ローマ出身の物理学者。統計力学、核物理学および量子力学の分野で顕著な業績を残しており、放射性元素の発見で1938年のノーベル賞を受賞している。実験家と理論家との2つの顔を持ち、双方において世界最高レベルの業績を残した、史上稀に見る物理学者であった。Wikipediaより引用
ヴェルナー・マグナス・マクシミリアン・フライヘア・フォン・ブラウン(Wernher Magnus Maximilian Freiherr von Braun、1912年3月23日 - 1977年6月16日)は、科学者であり、ロケット技術開発の最初期における最重要指導者のひとりである。ドイツ人だが、第二次大戦後にアメリカ合衆国に移住し、研究活動を行った。旧ソ連のセルゲイ・コロリョフと共に米ソの宇宙開発競争の代名詞的な人物である。Wikipediaより引用
エルネッティはワイヤーレコーダーの調整を見て、このアイデアを思い付きました。
音声がワイヤーに記録されるように、すべての生きとし生けるものは時間の経過とともに、それらの痕跡を周囲に残すのではないか、という理論です。痕跡は正体不明の形式で構成されているエネルギーにより記録されます。エネルギーの形で痕跡が記録され、視覚と音の不特定の"アストラル球(アカシック・レコード)"を構成し、時間の経過ととも減衰はするものの恒久的に失われることはなく、環境への痕跡を残しているのでいつでも取り出すことができます。
曖昧に見える理論ですが、物理学の原理に基づいて、一度作られた光景と音の波が記録されているのであれば、その後、任意のエネルギーとして再構成することができる、とエンテッリは考えました。

※クロノバイザーの装置構成図
クロノバイザーは、時間・場所を選択するためのレバー・ボタン類を備え、装置は大きなキャビネットに納められ、画像を表示するためのブラウン管がついていました。部品は大きく3つに分かれています。
1.一連の送信機とアンテナ。3つの神秘的な金属で、音と電磁放射の全波長の情報を受信します。
2.受信した音声を増幅するためのモジュール。
3.イメージと音を記録する非常に複雑な一連のデバイス。
フランソワ・ブリュヌは著書の中で、クロノバイザーにより次のような過去の事例が見聞されたとしています。
ナポレオンの顔
※画像なし
ローマ帝国の市場から厳粛な上院議会まで
トラヤヌスの野菜市場、紀元前63年のキケロのスピーチ
古代ローマの劇場
紀元前169年、永久に失われたと考えられている悲劇ティエステスを目撃、記録
キリストの受難
磔刑にされたキリストの写真

左:クロノバイザーの写真 右:Lorenzo Cullot Valeraの彫刻
恐るべき装置です。過去に有ったことなら、世界中の何時・どこでもアクセスして映像と音声を再現できる装置。使い方を誤れば大変なことになるでしょう。
開発チームも同じことを考えて、自発的にデバイスを解体することを決定しました。過去のいかなる場所、いかなる時にも調整できるので、誰からもプライバシーがなくなってしまいます。間違った使い方をすれば、"世界が今まで経験した最も恐ろしい独裁"に使うことも可能だからです。
1950年代に開発されたクロノバイザーは恐らく1970年までにはすべて取り壊されているようです。(しかし、数台作られた装置のうち、現存するものがあるという説、バチカンの大金庫に保管されているという説もあります。)
クロノバイザーの疑問点はあらゆる物証が存在しないことです。
フォン・ブラウンは1945年、ドイツの敗戦時にペーパークリップ作戦でアメリカに渡っています。エンリコ・フェルミも1938年のノーベル賞受賞の際にアメリカに亡命しています。フェルミの没年は1954年。クロノバイザーは1950年代に開発されたそうですが、アメリカにいる二人の科学者とプロジェクトを組むことが可能だったのでしょうか?
さらに、撮影したとされるキリストの画像は、スペインの彫刻家ロレンツォ・クジョ・バレラ(Lorenzo Cullot Valera)の有名な作品との類似性が公表されて間もないうちに指摘されています。顔のアップはこちら。ホームはここ。
悲劇ティエステスの記録されたテキストも短すぎるという指摘がされています。
また、エルネッティが死の床でキリストの写真と、悲劇ティエステスのテキストが捏造だと話したという未確認の情報もあります。
エルネッティを非難することは簡単ですが、どうしても疑問が残ります。
量子物理学の学位を持ち、キリスト教以前の古音楽の研究者としても高名であり、ヴェネツィア教区の公式のエクソシストを長年務めた、地位も名誉もある聖職者が、虚偽のデバイスを発表することで何か利益があるとはとても思えません。
キリストの写真については、彫刻家が神秘的な啓示を受けて見たビジョンと、クロノバイザーの画像が一致するのは当然だという反論もなされています。同一の情景を神秘的なビジョンで見ても、科学装置で記録しても同じものが残るのは当然だ、ということです。
ここまで、クロノバイザーを調べてきましたが、謎だけが残りました。
クロノバイザーは「ヴァチカンのタイムマシン」とも言われています。同時期にアメリカで行われた「モントークプロジェクト」とリンクした大きなプロジェクトの一環だったという説もいくつか見ました。
「モントークプロジェクト」はオカルトファンにはおなじみですね。「フィラデルフィア実験」を含む大きなプロジェクトです。
世界にはまだまだ不思議があります。
【追記】
やっとクロノバイザーまとめました。英文とイタリア語のwiki、それといくつかの英文サイトを参考に記事を作成しました。
【関連書籍】
左:タイムマシン開発に取り組んだ科学者たちの歴史を時系列でまとめた読み物。主な登場人物はニコラ・テスラ、アインシュタイン、エディントン、ホーキング、キップ・ソーン、リチャード・ゴットなど。ここにクロノバイザーも紹介されています。
右:クロノバイザーについての書籍(英文)。
【関連リンク】
Chronovisor - Wikipedia(英語) まずはここから
Chronovisor - Wikipedia(イタリア語) イタリア人のトピックなのでこちらがより詳しい
Pellegrino Ernetti - Wikipedia(英語)
Pellegrino Ernetti - Wikipedia(イタリア語)
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https://www.youtube.com/watch?v=GBfKNt5kCsg