2011年09月20日

西遊記の謎 沙悟浄はなぜ河童になったのか?


※中国中央電視台制作「西遊記」  右の画像は沙悟浄(沙和尚)

日本人も大好きな中国四大奇書のひとつ「西遊記」。

最強の妖怪である孫悟空が天界、地上、霊界に大暴れをする前半部は中国でも大人気です。「悟空大いに天界を騒がせる」は凄いエピソードの連続です。

  • 須菩提祖師に弟子入りし、「悟空」の戒名を貰い、七十二般の変化と斛斗雲の術を会得する。

  • 寿命が来て閻魔大王の元に行ったとき閻魔大王を脅迫し、いわゆる「閻魔帳」の自分と幹部のサルたちの名前を塗りつぶし、寿命を無くす(不死となる)。

  • 四海の龍王を脅して、如意棒と鎧一揃い(歩雲履、金の鎖帷子、鳳凰の羽がついた紫金冠)を強奪する。この装備が「斉天大聖」時代のイメージとなります。

  • 西王母の桃園で九千年に一度実り、一つ食べれば不老不死になる桃をすべて食い荒らす。

  • 太上老君(老子:仙人のボス)の仙丹を食い荒らし、不老不死と金鉄の身体を手に入れる。

  • 天界の数万の軍勢を相手に互角に戦う。中国でも人気の三太子(ナタ)と互角に戦うが、二郎真君(楊ゼン)の哮天犬(秘密兵器:宝貝)に敗走して捉えられる。



  • ※斉天大聖のイメージ画像 (携帯用はこちら。)

    その後、釈迦如来により五行山の下に400年間封じ込められ、三蔵法師に救われて、西天に取経の旅に赴くこととなります。

    古今東西全ての妖怪の中でも間違いなく最強の妖怪です。あらゆる意味で不老不死のため通常の攻撃は全て無効(但し仙術、神通力による攻撃は有効、人参果の鎮元大仙の釜茹でを逃げたエピソードなど)、毒ガスなどで一時的に戦闘能力を奪われるなどの方法でしか、ダメージを受けません。

    日本妖怪の攻撃もダメージを与えられるようなものはないでしょう。ゲゲゲの鬼太郎の攻撃はそよ風に吹かれるようなものだろうし(閻魔大王を脅迫したエピソードからも明らか)、獣の槍もダメージを与えることはできません。なぜなら西遊記の物語終了時には悟空は成仏して「闘戦勝仏」という仏様の位も得ているからです。ぬら孫リクオの妖刀もダメ(仏様でもあるから)、とらの炎、雷もダメ(太上老君の八卦炉で焼かれてもノーダメージの実績あり)。GANTZ100点モンスターぬらりひょんも子供扱いでしょう(七十二般の変化と不老不死の悟空には絶対にかなわない、引き分けに持ち込むのが精々かな)。

    何せ、旅の先々で土地神を呼び出しては家来同前に扱っています。少年サンデーの名作「結界師」では土地神は最強クラスの扱いでした。

    三蔵法師の呪文で頭を締め付ける輪っか?これも西天取教が成就して、仏の位を得た時に外れています。

    西遊記には道教の様々な暗号が封じ込まれていて、太田辰夫・鳥居久靖の名訳、平凡社版の「西遊記」の注釈、および北海道大学の中野美代子教授(1996年に定年退官)の名著「西遊記の秘密 - タオと煉丹術のシンボリズム」(福武書店、1984年/岩波現代文庫、2003年)などで詳しく解説されています。

    私も西遊記が大好きで太田・鳥居訳の平凡社版の「西遊記」は何回読み返したか判りません。また1986年頃から深夜放送で中国中央電視台制作の「西遊記」が放映され、これも夢中になって見ました。

    そこで疑問に思ったのが沙悟浄の図像です。

    日本のアニメ・ドラマ・映画では河童の姿で描かれることが多い沙悟浄ですが、原作や中国版「西遊記」では顔が黒いお坊さんのイメージです。

    沙悟浄の日本でのイラスト


    なぜ、日本ではこのような河童のイメージになってしまったのでしょうか?

    調査自体は手間さえかけて「西遊記」の図書、漫画、アニメの画像を確認していくだけなので簡単といえば簡単ですが、実際には国立国会図書館に行って調査をするのも大変です。(´・ω・`)

    学部の卒論には良いテーマだと思うので、どなたかか書いたらぜひ教えてください。

    WEBで検索したら、早稲田大学の堀誠教授が小文を発表していました。

    堀誠教授の調査によれば昭和30年前後の漫画、挿絵ではすでに沙悟浄は河童の姿になっていました。

    堀誠教授が見つけた最も古い「沙悟浄=河童」の図像は、昭和7年3月刊の『孫悟空』(大日本雄弁会講談社「少年講談」5)です。「河童の化物沙悟浄」の章に、「腰に九つの髑髏をつけ、宝馬という槍を抱へ、頭に皿を乗せた河童の化物。恐ろしい顔をして出て来た。」とあり、次頁の挿絵はいかにも怖そうな河童姿に描かれています。(リンク先に画像あり

    もう一冊、同年11月刊の宇野浩二『西遊記物語(前篇)』春陽堂「少年文庫」36)の「はしがき」に、「河童の王の沙悟浄がお供をする」書かれています。

    しかし、大正15年4月、翌昭和2年12月に出版された版には、そのような記載はなかった。その他、大正以前、明治、江戸期の文献にも「沙悟浄=河童」の挿絵や記述は見つからなかったとしています。

    京都の水文化を語るボランティア団体カッパ研究会」にも記述がありました。
    http://www.kappa-kyoto.vis.ne.jp/ ※現在サイトはなくなっています。

    問:西遊記の沙悟浄は、いつから河童になったでしょうか。

    答:西遊記は、中国の明の時代(16世紀)に書かれた本です。沙悟浄と河童の関係は、よく聞かれるのですが、河童は日本だけに住んでいて、そんな昔に中国に行ったことはありせん。

    この沙悟浄を河童にしたのは、誰かなのか分からないのですが、明治の初めの頃に講談で語られたのが、その起源だと考えています。中国の水の妖仙のことなど説明できないので、日本で誰もが知っている河童にしたのでしょう。

    西遊記に出てくる沙悟浄は、天帝の宝である玻璃の器を割ったことで天界を追われ、南瞻部州・唐土の流沙河で人を喰らう妖仙です。この沙悟浄を河童として書いている本は、明治44年から大正13年の間に発刊された講談本(立川文庫)です。西遊記の講談を聞いてください。河童がどんな活躍をしているのか・・・・楽しみですね。


    この説では明治時代の講談で沙悟浄をわかりやすく説明するために、河童として語ったのが起源としています。

    沙悟浄は天竺へ向かう難所、向こう岸が見えない大河、流砂河の人を喰らう水怪として西遊記に登場します。明治から昭和の初期にかけて誰かが、日本人になじみ深い「河童」のイメージで描写したことが拡大して、日本では「沙悟浄=河童」のイメージが定着したのでしょうか。

    しかし、「沙悟浄=河童」のイメージも日本では少しづつ変わっています。

    峰倉かずや原作による漫画作品「最遊記」(1997年〜)では、「西遊記」のキャラ全員を現代風のイケメンに描いています。「最遊記」はアニメ、映画などのメディアでも制作されており、沙悟浄のイメージにも影響を与えています。
       

    小学館コロコロコミックの小西紀行作のギャグ漫画「西遊記ヒーローGo空伝!」(2006〜2008年)、「ゴゴゴ西遊記」(2008年〜連載中)では沙悟浄は頭にバンダナを巻いたイケメン風に描かれています。
       

    沙悟浄の日本版「西遊記」(TVドラマ)での姿

    2006年、フジテレビ制作の「西遊記」でも、ウッチャン演ずる「沙悟浄」は1978年日本テレビ岸部シローのイメージを受け継ぎつつも、頭にバンダナ(サッシュ?、ターバン?)を巻いており、頭の皿は見えていません。

    2013年7月携帯電話ウィルコムのCMに西遊記の三蔵法師一行が登場しました。

    ※2013年7月5日より放映の始まったウィルコムCMの三蔵法師一行。


    ※設楽統演じる沙悟浄。河童の姿ではありません。

    ここでは、沙悟浄は河童の姿になっていませんが、そもそも、三蔵法師が女性で髪は長いままだし、孫悟空も猿の姿になっておらず、猪八戒も豚の姿になっていません。これは単なる手抜きでしょう。(笑)

    ちなみに原作の三蔵法師は中年の色白で小太りのお坊さんのイメージです。中国中央電視台版もそうなっていますが、日本は夏目雅子の三蔵法師以来、若くて美しい女性が演じることになってしまったようです。


    ※ウィルコムの西遊記CM。30秒版。

    個人的には中国中央電視台制作「西遊記」のキャラのイメージが強いので、日本での「沙悟浄」のイメージが原作通りになってほしいと思います。

    大田・鳥居訳の原作、中国中央電視台版を見ると、沙悟浄は義理堅く、まじめで重い荷物を運び本当に良い男です。手元を誤ってガラスの杯を割っただけで厳しい罰を受けたのはかわいそうな気がします。相棒の猪八戒は月の嫦娥(超美人の月の仙女)にセクハラをして地上に落とされました。八戒の性格だから、かなりひどいセクハラだったのでしょう。

    手元を誤って貴重な杯を割った罪と、月の仙女にセクハラをした罪が同じというのは少し不公平な気がします。

    原作の沙悟浄は真面目なゆえにちょっと影が薄いのも残念です。

    しかし影が薄いからこそ、二次創作ではイケメンになったり結構活躍をしているのでしょうか。


    ※中国での一般的な沙悟浄のイメージ画像

    【関連DVD】
       
    左の2つが1986年の中国中央電視台版です。画質はそれなりですが、六小齢童の孫悟空の演技は素晴らしい。重力を感じさせない猿の動きは驚きです。

    また、「斉天大聖:チーテンターシュン」や、孫悟空を敵の妖怪がののしるときの「弼馬温(ひつばおん):ピーマーウェン」、「師父(三蔵法師)」を「シーフォン」、「観音菩薩」を「かんのんぼーさー」と中国語で呼ぶ発音が良いと思います。

    悟空、悟浄、八戒の掛け合いも日本版では絶対に見られない素晴らしさです。

    【関連リンク】
    河童の沙悟浄 堀 誠(早稲田大学教育学部教授)の小文
    沙悟浄 - Wikipedia
    沙和尚 - Google画像検索 中国では「沙和尚」の呼び名が普通。

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    posted by 桜 真太郎 at 14:27 | Comment(1) | TrackBack(0) | 妖怪・モンスター
    この記事へのコメント
    沙悟浄の一番左の日本のアニメ「西遊記(1960年)」の画像ですが、このアニメ映画では河童とはされていません。
    劇中のセリフでは「大入道」と呼んでいますよ。
    Posted by にわか at 2017年02月28日 10:09
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