黒川 伊保子氏著、「キレる女 懲りない男: 男と女の脳科学」 (ちくま新書)
富士通で人工知能を研究していた著者がAI開発の経験を生かし、男女の脳の性差を「取扱説明書」という形でわかりやすく解説しています。
なぜ、女性が突然キレる(ように男性から見える)のか、男性にとって永遠の謎を解き明かしてくれた名著だと思います。
また、女性にとっては男性をどのように扱えば、うまく動かせるのか、という視点で男性の取扱説明書が書かれているので、とても参考になると思います。
最後の章にある、年代別の脳の機能の変化も興味深い内容です。脳科学者ではなく、コンピュータ科学者の視点から解説した脳機能の説明、名著です。
200ページ弱の薄い新書で、簡単に読めるところがまた良い。
脳科学、心理学の本は多数読んできましたが、この切り口は新しく、今まで見たことのないものです。
以下、概要のまとめです。
男女の脳の性差
脳梁の太さが女性は太く、男性は細い。一般的に女性の脳梁は男性に比べ20%ほど太い。女性脳は右脳でイメージしたことを、すみやかに言語化し次々と結論を出す「実用装置」である。
男性脳は左右の脳の連携が悪いため、現実の生活とは別の論理的な事柄を扱うのが得意。自らの感覚を絶って客観的な判断をしたり大きな世界観を構築することができる。
女性脳の取扱説明書

☆女性脳は実用的である
女性脳は脳梁が太いため、右脳でイメージしたことを現実に照らして実行するのが得意。
☆女性脳はたしかに思い込みがはげしい
女性脳はイメージしたことを速やかに言語に変え、すぐに実行できる。
分析の時間が短いため優秀な女性ほど思い込みが激しくなる傾向がある。
◆女性脳トリセツ1 とにかく話を聞く
意味のわからない、整合性のない話でもとにかく良く聴く。
これが女性の好感度を上げるコツ。
☆女性脳に大切にされると長生きする
女性は直感を無意識に意味づけて行動していることがある。
配偶者の不調にもいち早く気づきリスクを回避していることも多い。
これはビジネスにおいてもあてはまる。
◆女性脳トリセツ2 とにかく、傍に置く
面倒くさがらずに女性を育てることが大切。
将来、絶対に大きなリターンがある。
☆女性脳は「察してナンボ」の脳である
◆女性脳トリセツ3 言ってくれればやったのに、は禁句
これは女性のもっとも嫌う言葉のひとつ。
正しい言葉は「気が付かなくてごめんね。」「察してあげられなくてごめんね。」
男性は、つい、言っていることが多いのではないでしょうか(笑)。
☆女性脳には、男の隠し事なんてバレバレである
女性の観察力はものすごい。
本人が気づかない無意識でも異変を察知していることもある。
男性は隠し事、特に浮気は絶対に隠せないと思った方が良い。
◆女性脳トリセツ4 過去の浮気を告白してはいけない
過去のことでも女性は現在のことのように感じる。絶対に禁句。
冗談でも、年月が経った昔のことでも絶対にダメ!
☆女性脳は、年齢とともに大きくなる知恵袋である
女性は過去のことでも感覚に結びつけて現在のように感じる。
経験が増えれば引き出しが増え、現在の問題を解決できる。
これは女性脳の標準機能である。
女性が過去の話を何度も蒸し返すのもこれが原因。
◆女性脳トリセツ5 過去を蒸し返されたら、優しく謝る
過去の話でも女性は今現在のことのように感じている。
正しい対応は、「何度でも優しく謝る。」
ただし、自分の心に傷を残さないことも大切。
女性が過去の話を蒸し返すのは、現在の関係が大切なことの証でもある。
◆女性脳トリセツ6 女性がキレたら、理由を追及せず、ただ真摯に謝る
女性がキレたときは過去全てのことが積み重なっている。
今現在のことは、最後の一押しに過ぎない。
正しい対応は、「真摯にひたすら謝る。」
自分が正しくても反論しないことが大切。
◆女性脳トリセツ7 答えようのない質問に善処する
女性脳が切れる前にできるメンテナンスもある。
それは答えようのない質問に対する対応。
「あなたって、どうしてそうなの?」
「仕事と私、どっちが大事なの?」
これらに答えるのは×。
質問の本当の意味は次のようなものだから。
「あなたに期待してきたけど心底がっかりした。」
「次に同じことをしたら切れるからね。」
ここではひたすら悔い改めて、謝るのが正解。
「きみにそんな質問をさせたのが悲しい。」
「きみを傷つけてしまって申し訳ない。」
☆女性脳には、一秒たりとも無駄話という時間はない
女性脳は過去の膨大な記憶を一瞬で検索し、必要な情報を引き出すことができる。
これは出来事に感情のヘッダが結びついているためである。
無駄話と見える会話も情報の蓄積となり意味があるのである。
☆女性脳は共感してくれる相手に愛着がわく
女性との会話は共感が何より大切。
女性は共感してくれる相手に好感を持つ。
問題解決の議論においても共感しながら進めるのが理想。
◆女性脳トリセツ8 ことばの反復と、体験返し
共感ができない男性は、相手の言葉を反復するだけでも良い。
「道が混んでたの」 「道が混んでたのか。」
「体調がわるいの」 「体調がわるいのか」
これに相手を心配する言葉を付け加えれば、完璧。
「大変だったね。」「大丈夫?」
愚痴や体調不良の際は上記対応が良い。
相手を批判、否定する言葉は絶対に×。
さらに、自分の類似の体験を語るのが望ましい。
これが、女性脳の必殺技、体験返し。
☆女性脳は、経緯をしゃべりたがる
感情が情報のヘッダーになっている女性脳は、結果より、どう感じたかのプロセスが大切。
結論を言う前に経緯を話したがる。
しかし、結論から言う方が大切ということも理解できる。
(女性の感情的には気持ち悪いそう。)
職場では結論から言うように指導しても良い。
☆女性脳は、過去を「一部否定」されると、破綻する
プロセス優位の女性脳にとっての弱点がある。
結果がうまくいったことの傷、ミスを指摘されることである。
結果が良かった場合女性脳はプロセスを肯定したい。
ここで途中のミスを指摘すると脳が混乱して、傷が残る。
男性はうまくいったことの途中のミスを指摘することは厳禁!
逆に失敗事案のミスは気にならない。
◆女性脳トリセツ9 結果よかったことについて、過去の失敗を指摘しない
職場でも家庭でも女性に対して、うまくいったことの途中のミスを指摘することは厳禁!
プロセス優位の女性脳は混乱して破綻してしまい能力も低下してしまう。
励ますつもりでも厳禁、女性の心に修復不能な深い傷を残すことになる。
逆に失敗事案のミスはどんなに追及しても気にならない。
女性管理職はこの点に注意が必要。
自分が気にならないからといって、男性部下に失敗事案のミスを深く追及するのは厳禁!
◆女性脳トリセツ10 過去をねぎらう
過去の記憶に感情が結びついている女性脳は過去をほめられると快感度が高い。
小さなことでも過去をほめると、女性の信頼度は上昇する。
◆女性脳トリセツ11 言葉のダイヤモンドをあげる
女性との現在を肯定する至極の一言となる言葉が大切。
女性脳は過去の悪い思い出もすべて肯定してとらえる。
また、将来にわたってもその言葉を思い出し良い関係が続く。
「きみの味噌汁を飲むのも20年になるのか。」
「きみといて僕は本当に幸せだった。」
◆女性脳トリセツ12 過去をねぎらう(営業編)
過去を否定しない、過去をねぎらうことは女性相手のビジネスの現場でも大切。
商品であれば今まで大事に使用していたものを否定したら絶対にダメ。
「大切にしていたんでしょうが、もう部品がありません。」
「今まできれいにお使いになられましたね。」
☆女性脳は、「少し先の楽しみ」に照らされて生きていく
◆女性脳トリセツ13 そろそろ、キミの○○が食べたい、と言える男子になる
女性の得意料理をリクエストして相手を楽しませるのも大切。
一般的なメニューでなく○○の入った××、○○味の××などが良い。
ただし、「お昼なに?」「晩飯なに?」は禁句。
女性を絶望の淵にたたき込むNGワード。
似ているけど違うので要注意。
☆女性脳には「これしかない、一押し」が降りてくる
記憶に感情のヘッダーがついている女性は関連記憶を臨場感を持ち再現できる。
これは未来のことにも応用ができる。
商品開発などの際に、直感的に「これしかない、一押し」が降りてくることがある。
男性には理解しがたいが、これが正しい場合も多い。
男性はこのことを覚えておいた方が良い。
また、プライベートな場面で、この直感があった場合に他の案は受け入れられない。
男性はこれも要注意。
☆女性脳は、即決もするが、寄り道もする
女性脳は直感で即決して意思決定を行う。
しかし、その割には時間がかかるのでは?、
という疑問を男性は抱くだろう。(買い物など)
これは直観力を高めるために脳の準備運動として、寄り道が必要だから。
◆女性脳トリセツ14 あなたのお薦めは? に即答する。
女性は意思決定の際、「これしかない一押し」を持っている。
プレゼンの際に、男性はフェアな複数提案をすることが多い。
しかし、決定権のある女性に「お薦めは?」と訊かれた際には、
一つを自信を持って即答することが大切。
これができないと「使えない奴」と思われることがある。
☆女の涙は心の汗である
記憶に感性が紐づいている女性は、まれに感情のコントロールに失敗することがある。
現在の小さなことに、過去の関連記憶が引き出され涙が出てしまうことがある。
◆女性脳トリセツ15 職場の涙は、見て見ぬふりをする
女性が職場でいきなり泣き出しても、これは生理現象であり、気にする必要はない。
見て見ぬふりをするのが正しい対応。

男性脳の取扱説明書
☆男性脳は、目の前のことに頓着しない
◆男性脳トリセツ1 思いやりで、愛を測らない
男性脳は察してフォローする「思いやり」能力に欠ける部分がある。
女性をエスコートする際に注意するのは3点だけ。基本は「足元を気遣うこと。」
女性はハイヒール、ロングスカートなどで足元が不安定になりがち。
1.車の乗り降り 2.階段の上り下り 3.椅子に座るとき・立つとき
この3つのエスコートをすることが大切。
◆男性脳トリセツ2 不満があったら、率直に言ってみる
女性は「なんでわかってくれないの?」と不満を貯めるのは無駄。
言葉に出して不満を男性に伝えることが大切。
☆男性脳は、フェアである
男性脳は目の前の人の事情も頓着しないが、自分の事情も頓着しない。
「遠くのものほど」気になる習性があるためである。
自分の事情に近い「私」より「公」を勘案する傾向があり、基本的にフェアである。
◆男性脳トリセツ3 優先順位で、愛を測らない
女性脳は大切な人を最優先に考える。
男性脳は全く逆。
女性は男性の優先順位で愛の深さを測らないこと。
◆男性脳トリセツ4 提案は、フェアな複数候補の態にする
女性脳の項でいう「これしかない一押し」は男性脳には違和感がある。
「一押し」があっても、客観的にフェアな複数提案の形にする方が職場ではうまくいく。
☆男性脳は、空間認識力が高い
男性の脳は空間認識能力が高い。
空間全体を一気に把握し、広さや構造を理解し自分の位置を測る。
この能力は見えない空間にもおよび数学空間や宇宙空間を楽しむことができる。
女性にもこの能力のある人はいるが、男性の方が圧倒的に多い。
これは男性脳が左右の連携が悪いことに起因する。
左右の感覚器官から入ってきた情報を右脳、左脳の受け止め方の差により三次元情報を算出している。
しかし、この能力のため男性脳には「ぼーっとする」特性もある。
右脳に集中して空間認知能力を働かせていると、左脳への交信が疎かになる。
このため話しかけてもすぐに反応できない時間が暮らしの中に挟まってしまう。
子育ての際にも、男の子がぼーっとしてることが多いのはこれが原因である。
◆男性脳トリセツ5 愚痴や指図で追い立てない
「ぼーっとする時間」は男性が大人になってもある。
女性に「無駄話」という時間が無いように、男性にの「ぼーっとしている時間」は無駄ではない。
休日に男性がぼんやりしていても女性は怒らないで大目にみることが大切。
この時間は男性が情報を整理し明日への英気を養う時間なのである。
また、男性も「俺は働いてるんだぞ!」と逆切れして奥様を怒らせないことも大切。
専業主婦も忙しいのである。
◆男性脳トリセツ6 家事の全容を理解させる
平均的な男性脳は家事労働の約三分の一しか認知できていない。
実作業だけでない、備品管理や作業サイクルの把握が欠如しているためである。
このため男性が「家事を半分手伝っている」と考えていても、それは妻の把握している六分の一でしかない。
これが夫の家事参加満足度と妻の感謝度の差となってしまう。
男性は家事を手伝う気がないのではなく、家事の全貌が見えていない。
妻はこの理解から始める必要がある。
☆男性脳は、とりとめのない話に耐性が低い
◆男性脳トリセツ7 結論から言う、数字を使う
☆男性脳は、頼んだものを取って来られない
◆男性脳トリセツ8 ものを取ってと頼むのは、必要最小限にする
☆男性脳は、序列を気にする
◆男性脳トリセツ9 秩序を、安易には乱さない
◆男性脳トリセツ10 兄を立ててやる
◆男性脳トリセツ11 夫を立てると、息子の成績が上がる法則
☆男性脳は先が見えない事態に弱い
◆男性脳トリセツ12 細かいゴール設定と、その確認を怠らない
☆男性脳は、責務を遂行し続けた相手に愛着がわく
◆男性脳トリセツ13 死ぬまで頼りにする
年齢脳の取扱説明書
☆人生で最も頭の良いのはいつか?
ヒトの脳は男女とも50代半ばに、知の大団円=連想記憶力という力がピークに達する。
出力性能ではヒトの脳は50代半ば以降に「最も頭の良い」状態を迎える。
☆15歳から28歳、がむしゃらな入力装置の頃
☆30代、脳は失敗したがっている?
☆40代、物忘れは進化である
☆50代、優秀な出力装置へ
☆60代 知を楽しむ年齢
☆その後、寿命を迎えるまでに、脳がすること
女性は不可解だと思っている男性、あるいはその逆も多いと思いますが、とても思い当たることの多い内容でした。
女性が切れたら反論しないでひたすら謝る、というのは男性にとって納得のいかない部分もありますが、それが女性脳の "仕様" であるならば、うまくつきあっていくために必要なことなのでしょう。
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えっ?どうしてそんなことでキレるのと思う事が多く、少しおかしいのかなと思っていました。
彼女がキレる、情緒不安定だと思ってたことが、普通だと安心しました。
女性の脳は納得出来ませんがうまく付き合うしかないんですね〜
ありがとうございます