2011年06月18日

空を自由に飛びたいな♪ 個人飛行機具 その2 ロケット・ベルト


※1984年ロサンゼルスオリンピック開会式に登場したロケットベルト 10秒~

マーチン・ジェットパックを調べていたら、他にも個人飛行機具があるのを知りました。結構色々なものがありました。

まずは全ての元祖、ロケット・ベルト(BELL ROCKET BELT)です。
言わずと知れたロケット・ベルト。様々な映画・アニメ・漫画などに描かれた、イメージのもとはこれ。1960年代初頭、 ベルエアロシステムズが基本的な概念を考案し研究が重ねられてきました。

高濃度の過酸化水素水を窒素ガスの圧力(40気圧)で、触媒に吹き付けて水蒸気と酸素に分解し、反応熱で気化させてノズルから噴射します。噴射するガスの温度は740℃にも上り、パイロットは耐熱服を着用する必要がありました。

飛行自体は1960年代に成功しています。しかし、危険な過酸化水素を燃料に使い、また噴射ガスが高温になり危険、航続時間も20〜30秒であったため、実用化には至りませんでした。一番の見せ場はやはり1984年のロス五輪開会式だったのでしょうか。映画やアニメなどでは大活躍しましたが、現実はうまくいかなかったようです。


※ロケットベルトRB-2000による飛行。画像引用元はこちら

ロケットベルト(RB-2000)の主な仕様・諸元は以下の通り。

乗組員:1名
長さ: 3フィート(0.9m)
翼幅 : 18インチ(0.45 m)
高さ: パイロットの身長に同じ
装備重量: 125ポンド(57キロ)
推進装置: ベルロケットエンジン1基、推力:145kg(1.42 KN)
推進剤: 純度90% 過酸化水素
最大速度 : 毎時60マイル(100 km/h)
最大高度:30m
飛行時間:30秒
航続距離 : 860フィート(260メートル)

実際の移動手段としての実用にはとても使えませんね。

ロスアンゼルスオリンピックで使用されたものは、改良品のRB-2000というモデルです。
ベルロケットベルトより性能が若干向上しています。

現在ロケットベルトを販売しているところを探したら2社が見つかりました。

TAMロケットベルト社

※TAM社のロケットベルトを使用した飛行の様子。公式サイトGalleryより。

メキシコにあるロケット関係の製品を販売している会社。顧客の要望に合わせたロケットベルトを提供する世界で唯一の企業です、と自信満々です。技術的にはベル社の技術を受け継いだ機体を製造しています。2005年まではタイラー社の製品を販売していました。

ロケットベルトの価格は現在ウェブサイトでは「お問い合わせください」になっていますが競合他社の比較記事では訓練、整備費用込みで25万$(3,125万円)となっています。ロケットベルトの製品紹介はこちら。飛行ビデオや写真も多く掲載されています。

Jet PI Jet Packs(ジェットPIジェット・パック社)

※ジェットPIジェット・パック社のロケットベルト飛行の様子。公式サイトPhotogalleryより。

こちらが競合他社です。
ジェットパックH2O2 と H2O2-Zを販売しており、H202の価格は15.5万$(1,937万円)で航続時間が3秒長いとセールスしています。現在ジェット燃料使用のT73を開発中で、こちらは航続時間9分になる見込みです。

主な製品の仕様は以下の通り。
ジェットパックH202
最大飛行時間: 33秒
最大距離: 500フィート(152.4m)
最大速度: 毎時70マイル(112.5km/h)
最大高度: 120フィート(36.5m)
最大パイロット重量: 180ポンド(81.6kg)
燃料: 過酸化水素
燃料容量: 5.8ガロン(21.9リットル)

ジェットパックH202-Z
最大飛行時間: 43秒
最大距離: 1500フィート(457.2m)
最大速度: 毎時77マイル(123.9km/h)
最大高度: 250フィート(76.2m)
最大パイロット重量: 180ポンド(81.6kg)
燃料: 過酸化水素
燃料容量: 8ガロン(30.3リットル)

ジェットパックT-73(開発中)
推定飛行時間: 9分
推定距離: 約11マイル
推定速度: 毎時83マイル
推定最大高度: 250フィート
最大パイロット重量: 180ポンド
燃料: ジェット燃料
燃料容量: 5.0ガロン
エンジン: T - 73タービンエンジン

H2O2 と H2O2-Zはベルロケットパックの原理を使用したエンジンですが、T-73はジェットエンジンなので、まったく別タイプの製品です。H2O2-Zの"Z"はドラゴンボールと同じで過酸化水素を使用した製品では最後、という意味でしょうか。

ニッチなロケットベルトを販売している企業が複数あることに驚きました。

もう1社、販売はしていないけれど、パフォーマンスを提供している会社がありました。
パワーハウスプロダクションズ株式会社(Powerhouse Productions Inc.)

※満員のスタジアムで花火を点火したパフォーマンス。公式サイトGalleryより。

創立30年の歴史を持ち、ロケットマンのショーを提供しているパワーハウスプロダクションズ株式会社です。ロケットベルトは3台所有しています。ウェブサイトでは「我々は実験的なジェットパックとは異なり、本番で失敗したことがない。」と自信満々ですw

1984年ロサンゼルスオリンピックのロケットベルトの飛行もこの会社が行ったとのこと。世界各地で700回ものパフォーマンスに成功している実績に基づいた自信なのでしょう。(公式サイトHistory参照)

ここも公式サイトにはショーの値段が載っていません。雑誌「Popular Science」 2006年3月号の記事によれば、価格は2006年当時、30秒2回の飛行で2万$(180万円)だそうです。

※上記雑誌p.47 「 Powerhouse Productions, charges close to $20000 for an untethered 3O-second fligh」

ロケットベルトだけでも結構調べるの大変でした。

飛行機具としての実用化は難しいことが良くわかりましたが、ロケットベルトはホントにカッコイイ。
どの動画を見てもわくわくします。

あとは、ジェットマンと水パックロケット、日本製オートジャイロもまとめる予定です。

【関連リンク】
ベルロケットベルト - Wikipedia、フリー百科事典※英文のみ。日本語ページなし。
ジェットパック - Wikipedia、フリー百科事典※英文のみ。日本語ページなし。
Youtube ロサンゼルスオリンピック開会式 ロケットベルト
RocketBelt.nl※英文
オランダのロケットベルトマニア作成の解説ページ。Wikiより詳しくロケットベルトの歴史、機体、開発者、パイロットについて多くの写真とともに解説しています。ゲストブックもありますので興味があれば挨拶してみましょう。

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posted by 桜 真太郎 at 10:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 最新技術

2011年06月11日

空を自由に飛びたいな♪ ジェットパック2012年発売予定


空を自由に飛びたい。

ギリシア神話のイカロスを例に挙げるまでもなく、古代から人間が夢に思ってきたことです。

その思いは科学技術の進歩とともに実現してきました。

気球、飛行船、複葉機、プロペラ機、ジェット機、そしてついにはロケットで月にまで人間は到達しました。

しかし、飛行機で空を飛ぶのと、生身の体で自由に空を飛ぶことは同じではありません。

ドラえもんのタケコプター、ドラゴンボールの舞空術、バスタード!の呪文「黒烏嵐飛 / レイ・ヴン」などコミックやアニメの世界では生身で自由に飛ぶことを様々な方法で夢見てきました。

しかし、ついにその夢が誰でも手に入るところに来るかもしれません。

この写真はニュージーランドの企業、マーチンエアクラフト社が発表した製品です。6月上旬に欧米で一斉に報道されました。

1984年のロスアンゼルスオリンピックの開会式で世界を驚かせたロケットベルトは航続時間がわずか30秒程度でした。これは燃料に過酸化水素を使用した危険なもので、実用化には至りませんでした。

このマーチン・ジェットパックは実はジェットエンジンも、ジェット噴射も使用していません。ガソリンを使用するレシプロエンジンでファン(プロペラ)を回して飛行します。レシプロエンジンで2つのファンを回して浮上、飛行するのでホバークラフトに近い機体です。開発期間は30年、費用は700万$以上を投資したそうです。

ガソリン使用のレシプロエンジンとファン(プロペラ)という、いわゆる「枯れた技術」でこのような素晴らしい製品を作り上げた着眼点、発想が素晴らしいと思います。

社長のグレン マーチン(Glenn Martin)は1981年にこの飛行装置の概念を思いつき、30年間にわたる開発で実用化にあと1歩のところまで来ました。小さな会社なので奥様と息子さんも開発に携わっていたそうです。

マーチン社長および役員※一番上がマーチン社長です。
マーチン家の人々

家族とスタッフの努力でこの画期的な製品ができたと思うとなんだか微笑ましい感じがします。公式サイト「会社案内」のメニューでも家族紹介が役員紹介より上に置いてあります。本当に家族を愛しているのだと思います。

マーチン・ジェットパックの主な性能・諸元は次のとおりです。

ストラップ式一人乗り飛行機械 Martin Jetpack
価格 10万$(800万円)
乾重量 113.4kg(総重量242.6kg)
2リッター V型4気筒 2ストロークエンジン(独自開発)
最大出力 200馬力 6000rpm
燃料タンク 19リットル
滞空時間 30分
航続距離 50km
最高時速 100km/h
最高高度 2400m
上昇率 240m/分
パイロット体重範囲 63kg~109kg
講習15時間で操縦可能

公式サイトの技術情報はこちら。

アメリカでの販売を想定し、米国航空法の超軽量飛行機の要件を満たすように開発を進めているということです。超軽量飛行機に該当すると、免許なしで操縦ができるためです。発売は2012年の予定ですから、早ければ来年にも入手可能です。

高給車1台程度の価格で、個人が自由に空を散歩できるようになるかもしれません。

楽しみですね。

5月21日に行われたテスト飛行の動画はこちら。


機動性が良くわかる動画。


【関連リンク】
マーチン・エアクラフト社(Martin Aircraft Company Limited)
マーチン・エアクラフト社投稿動画一覧
Youtube ロサンゼルスオリンピック開会式 ロケットベルト

今回の記事を書くのに欧米のニュースサイトをかなり見ましたが、どこも部分的にしか記事がないので必要な情報をまとめるのに結構時間がかかりました。また欧米は単位にヤード・ポンド式で表記しているので換算も面倒でした。単位の換算はここが便利なので使っています。

個人飛行機具はロケットベルトをはじめ、ロケットマン(JetMan)、水噴射式ジェットパック「Jetlev」、ムササビWing Suit、日本製オートジャイロなど色々面白いものがありましたので折を見てまとめます。

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posted by 桜 真太郎 at 12:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 最新技術