2013年01月12日

ダイオウイカ生体ハイビジョン撮影記念! 海の怪物クラーケン


※クラーケン "Kraken"で画像検索するとTOPに出てくる画像。迫力があります。引用元:The Kraken


※クラーケンの版画。Pierre Denys de Montfort's "Poulpe Colossal" attacks a merchant ship (1810)。引用元:Wikipedia

明日、2013年1月13日(日)午後9:00〜9:58にNHKスペシャル「世界初撮影!深海の超巨大イカ」がついに放送されます。

放送記念として、ダイオウイカ、ダイオウホオズキイカはすでにまとめてあるので、今回はダイオウイカの目撃情報がもとになったと言われている、海の怪物クラーケンの記事を書いてみました。

RPGゲームではかなりの強敵で中ボスとして出現することもあります。また、映画などでもお馴染みのモンスターです。

日本語Wikiもかなり詳しくできていますが、ここは例により世界標準の英語wikiを翻訳(一部抄訳)してみました。日本語とは説明が若干、異なります。

-----------------以下翻訳

概説

クラーケンはノルウエェーとグリーンランド沖に生息すると言われる、伝説的な巨大な海の怪物です。

その伝説は、実際には触手を含んで体長が13mから15mに成長する現実のダイオウイカ類の目撃から始まったものかもしれません。

これらの怪物(クリーチャー、創造物)は、普段は大洋の深海に棲息しています。しかし、海面近くで船を攻撃することが目撃され、報告されています。

その途方もない大きさと恐るべき姿は、様々な創作物の中でクラーケンを海洋に住む一般的なモンスターにしました。

歴史

13世紀の古いアイスランドの叙事詩は二つの巨大な海の怪物、ハフグファ "Hafgufa"(「海の霧」の意味)とリングバーク "Lyngbakr"( ヒース"つつじの一種"の背中の意味)を語っています。このhafgufaはクラーケンのことであると考えられています。

※ハフグファ "Hafgufa" の宗教画。引用元:Wikipedia


※アイスランド・サガに描かれたリングバーク "Lyngbakr"。引用元:Wikipedia 

1250年にグリーンランドから戻った者(氏名不詳)による著作「Old Norwegian(古代のノルウェー)」にも、この怪物に関して詳細に記述がされています。

分類学の父と呼ばれる、カール・フォン・リンネは、クラーケンを頭足類に分類し、1735年出版の「自然の体系"Systema Naturae"」初版においてて Microcosmus という学名を与えています。ただし、 Microcosmusはそれ以降の版では削除されています。

「クラーケン」の名前が広く知られるようになったきっかけは、デンマークのベルゲン司教、エリック・ポントピダン" Erik Pontoppidan" が1752年〜1753年にコペンハーゲンで出版した「ノルウェー博物誌 "Natural History of Norway" 」で著述したことによります。

ポントピダンは、この怪物が時々は島に間違えられるほど大きく、船乗りにとっての危険は怪物自体ではなく、むしろ怪物が残した水の渦であることの注意をしています。しかしながら、ポントピダンはこの巨大な怪物クラーケンの潜在的な破壊力についても述べています。

「万が一、この怪物クラーケンの腕が最大の軍艦を掴んだら、それは海の底に引きずり込まれるだろう。」

ポピントダウンは不注意で死んだクラーケンが1680年にAlstahaugに打ち上げられたことを記述しました。

1755年までにポントピダンの著作は英語に翻訳され、世界に広くクラーケンの名が知られることになりました。

※クラーケンの名を世界中に広めた、エリック・ポントピダン" Erik Pontoppidan"。1698-1764

1802年に、フランスのピエール・デニス・ド・モンフォールは巨大なタコの二種類が存在することを述べ、大型のタコは、アンゴラ、ン・マロの海岸の沖で帆船を攻撃したことを報告しています。

外見と起源

18世紀以降はクラーケンは主に大きなタコや巨大イカのような姿で描かれています。しかし、初期の記述では大きな鯨、タコ、カニのような特徴を持っていました。また突然の危険な渦を引き起こすクラーケンの特性は、水の泡を含む、アイスランドの海中火山の活動に似ています。

-----------------翻訳ここまで

クラーケンの初期の姿は必ずしも、イカやタコの姿でなかったこと、分類学の父と呼ばれるリンネが初版の著作でクラーケンにMicrocosmusという学名を付けていたことも興味深いことでした。

1700年代まではクラーケンが実在すると思われていたことが良く分ります。

また、クラーケンがタコ型のイメージがあるのはフランスのピエール・デニス・ド・モンフォールの影響によるクラーケンの描かれた姿によるもので、イカ型のイメージはダイオウイカ類の目撃情報に基づくものでしょう。

フランスのピエール・デニス・ド・モンフォールは1782年に拿捕したフランスの戦列艦を含む10隻のイギリス軍艦が、一晩でクラーケンによって沈められたという、センセーショナルな説を発表します。しかし、イギリスでは生存者によってそれはハリケーンで沈んだことが判っていました。

当時も今も、こういう風説を流布する人たちがいることは変わりがありません。

しかし、海のイカ・タコ型巨大モンスター、クラーケンは世界中の人々のこころをがっちりと掴み、創作物では大活躍です。以下、クラーケン"Kraken"で検索した画像の良いものを何点か紹介します。大きい画像は引用元からどうぞ。


イカ型クラーケンがバイキング船を攻撃。美しいイラストです。引用元:Kraken Attack


船を攻撃するタコ型クラーケン。1800年代。引用元:Wikipedia


海岸でクラーケンに攻撃される船と冒険者。引用元:Kraken Illustration Art


作業船と並走する全長100m以上あるイカ型クラーケン。引用元:Kraken Encounters


上陸して路面電車を襲うクラーケン。引用元:Kraken


帆船に襲いかかる直前のクラーケン。引用元:Kraken Designs


クラーケンの王、クラーケン・ロード。素晴らしいイラストです。引用元:Lord of the Kraken

 
左:映画クラーケン、右:映画クラーケン・フィールド ※画像クリックでAmazonに飛びます。

世界中に数多くのモンスターがいる中で、映画の主役を務めることができるのはごく一部です。その大きさと強さ、欧米では古くから良く知られていることから、クラーケンは映画も作成されています。

クラーケンは、人々の想像力を刺激する魅力的なモンスターです。

【関連記事】
ダイオウイカ VS. マッコウクジラ
世界最大のイカ ダイオウイカ "Giant Squid" 大王烏賊
謎の巨大イカ, ダイオウホオズキイカ, Colossal Squid

【関連リンク】
クラーケン - Wikipedia かなり詳しい。
Kraken - Wikipedia 世界標準、英語版。
Kraken - Wikipedia 秀逸な記事のノルウェー語版。面白い。

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posted by 桜 真太郎 at 23:33 | Comment(0) | 妖怪・モンスター

2012年08月27日

アニマルプラネット 怪物魚を追え カッパ(河童)の正体


※河童の画像。怪異・妖怪画像データベース「河童」より。

アニマルプラネット "animal planet" 怪物魚を追え シーズン3 カッパ(河童)の正体

アニマルプラネットの人気シリーズ「怪物魚を追え」。シーズン3で日本のカッパ(河童)が取り上げられました。「特集:怪物魚を追え!BEST10 (公式サイトリンク)」でも番組ナビゲーターのジェレミー・ウェイドにより5位に選ばれている良作です。

日本は、どの国より怪物魚の伝説の多い国だということを番組冒頭に紹介します。

日本に初めて来た、ジェレミー・ウェイド。渋谷の交差点に立ち、こんな大都市に怪物魚はいるのか? と視聴者に問いかけます。

次に向かったのは築地魚市場。世界最大級の鮮魚市場で働く人たちから、怪物魚の情報収集を行います。

市場で、すぐにフグを見つけます。ジェレミーの見つけたかった怪物魚の一つです。日本人は猛毒があり、毎年犠牲者が出るこの魚を好んで食べることを説明します。(日本人の魚好きな国民性を説明しています。)

※築地市場のトラフグ

淡水の怪物の情報を収集する中で、一番証言が多かったのがカッパ(河童)とナマズです。ナマズはジェレミーが世界で出会った怪物魚の中でも最も人の命を多く奪っていると言います。

ジェレミーは河童とオオナマズを求めて、新幹線に乗り琵琶湖に向かいます。

人類学教授、黒田教授に会い話を聞きます。カッパ(河童)は子供の魂(尻子玉)を抜き、大きさは子供くらい、頭に皿のようなものがあり、背中に甲羅があります。手には人間と異なり指の間に水かきがあります。

ナマズは地震の時に暴れることを聞きました。地震を防ぐために鹿島神宮と香取神宮に要石と呼ばれる石を置き、地震を起こす大ナマズを押さえていることも。年に1000回以上の地震がある日本、それは本当にナマズのせいなのでしょうか?

左:鯰絵「鹿島大明神地震御守」   右:鯰(なまず)絵「要石」  教育用画像素材集から引用。

琵琶湖に行きルアーでナマズを狙うジェレミー。蓮の葉が広がる水面にルアーを投げます。何投目かで、見事45cmほどのナマズをGETしました。しかしジェレミーが狙っているのは普通のナマズではなく「ビワコオオナマズ」。

地元の釣具店で情報を集めます。日本の釣り人はオオナマズを狙う人は少ないとのこと。

2日目は水深の深い、琵琶湖の北部に向かいます。今日はピカピカのジグ(魚型のルアー)でオオナマズを狙います。昼間は釣果がなく、夜は餌釣りに切り替えます。雨の中、粘りますがオオナマズどころか魚一匹かかりません。2日間で釣果がなかったことで作戦変更をします。

漁業組合でウナギ漁師に話を聞きます。ナマズはめったにかからず、昨年、一匹かかったのは180cmくらいの大きさだということです。地震との関係では、地震の前は魚が良く取れるといったことがあるとのこと。

地震とナマズの接点がみつかりました。

ジェレミーは琵琶湖博物館で1.5mのビワコオオナマズの生体を観察します。

※ビワコオオナマズ。滋賀県のサイトから引用。

矢田教授に話を聞きます。教授は地震の前にナマズの活動が活発になるかを研究しています。研究の中では地震と関連性のあるデータもあるとのこと。

次はカッパ(河童)です。

日本の川にすむ河童は昔から人々に恐れられてきました。河童の好物は子供です。牛を水中に引きずり混む力を持つと言われています。

その姿は諸説ありますが、大きな口、長い胴体、茶色と緑のまだら模様の肌を持つようです。現れる場所は必ず水辺。そして音もなく忍び寄ります。子供を水に引きずり込み、魂(尻子玉)を抜きます。

子供を水中に引きずり込む話は日本各地であり、河童を知らない日本人はいないようです。

河童をまつる寺で姿を探します。掛け軸を見て姿を確認するジェレミー。

佐賀県の造り酒屋に来て、河童のミイラを見ます。守り神のため、科学調査は行われていません。ミイラは作り物だろうが、その正体の一端が見えたかもしれないと考えます。

※佐賀県にある松浦一酒造(株)に伝わる河童のミイラ。見学できます。公式サイト

京都大学の松井教授に日本の川にすむ生物を聞きます。そのなかで体長2mになる「ハンザキ」の情報を入手します。

ジェレミーは「ハンザキ」の研究者に会い、骨格とハンザキにかまれた人の写真を見て河童の正体は「ハンザキ」ではないかと確信を深めていきます。

研究者の栃本さんと共に現地調査に赴きます。

水中に潜り、「ハンザキ」を捕獲したジェレミー。激しく動きジェレミーを攻撃します。その正体はオオサンショウウオです。

※日本のオオサンショウウオ。学名:Andrias japonicus 英名:Japanese giant salamander

日本に古代より生息する特別天然記念物。しかし、近年では中国産や中国産との交雑種も生まれて問題となっています。

平たい頭、大きく裂けた口、長くしなやかな体、その先にはパワーのあるしっぽ。そして、指に水かきのついた手と足。体長は最大2mになり子供を水中に引きずり込む力を持ちます。そのすべてが伝説の河童に当てはまります。

オオサンショウウオの住み家はきれいな小川。子供の遊び場と重なります。また狩りの仕方は獲物を激しく吸い込みます。

ジェレミーはオオサンショウオが河童の正体だと確信して日本を後にします。





※水辺で撮影された河童のフィギュア。本物さながらです。画像引用元:空想立体工房
 なお、この写真の実物、限定1体が5万円で購入できます。詳細はこちら

河童を知らない人はいないと思いますが、どんな妖怪なのか再度、確認しておきましょう。

・大きさは子供程度。
・皮膚は緑色、または赤色。毛むくじゃらの姿を持つ種類もいる。
・頭頂には皿があり水で濡れている。これが乾くと力が出ない。
・短い嘴(くちばし)を持つ。
・背中には亀の様な甲羅がある。
・左右の腕がつながっており(通背・通臂)、片方の腕が伸びると片方の腕が縮む。
・きゅうりが好物。
・子供を水に引きずり込み、「尻小玉」を抜く。
・相撲といたずらが好き。
・恩返しに「河童の秘薬」の製法を教えてくれることがある。

日本の妖怪の中で最も良く知られている妖怪のひとつです。漫画やアニメでは人間に敵対することは少なく友好的な姿で描かれることが多いようです。

※絵本に描かれた河童。画像引用元:河童

得意の秘薬で、味方の妖怪や人間を治療する場面を見たことのある人も少なくないでしょう。

さて、河童の正体です。

これも様々な説があるので、まずは列挙してみました。

・カワウソ説
 水辺に住む毛むくじゃらな生き物です。一部の河童はこの誤認もあるでしょう。
・水死体説
 Wikiはこの説。緑色の皮膚、川底でこすられて頭頂が禿げた姿、肛門が開いた姿が河童に
 誤認されたとする説です。新生児の水死体という説もあります。
・未知の爬虫類人説
 河童そのままの未知の爬虫類人(レプティリアン)ではないかという説です。
 知能の高い爬虫類人がいるとすれば、否定し切れない説です。
・宇宙人(異星人・エイリアン)説
 河童の外見はいわゆる「グレイ型エイリアン」に良く似ています。
 上記の爬虫類人説の派生説。

身近な妖怪なのに、どの説も決め手に欠けますね。

そう考えると、アニマルプラネットの推理した「オオサンショウウオ説」は合理的かつ、説得力のある説に思えます。日本の妖怪なのに、日本ではあまり知られていない、オオサンショウウオ説を外国人に指摘されるのは恥ずかしい気もします。

オオサンショウウオは最大で2m、かなり大きな子供でも水中に引きずり込むことができるでしょう。

すべての河童がオオサンショウウオというわけではないと思いますが、多くの事例が説明できそうです。

左:巨大なオオサンショウウオ。撮影データ不明ですが多くのサイトにあります。
右:「しん板化物尽」掲載の歌川芳盛作の河童。怪異妖怪画像データベースより。

どうです?良く似ていませんか?

右の画像は、プーシキン美術館所蔵、「しん板化物尽;シンバンバケモノツクシ」に描かれている歌川芳盛作の河童です。怪異妖怪画像データベースに収められている画像です。大きい画像はこちら

ほぼ、オオサンショウウオそのものと言って良いのではないでしょうか。

TOP画像の一番左にいる河童も良く見るとオオサンショウウオに似ています。江戸時代の絵師たちは、暗黙の了解でオオサンショウウオをモチーフにした、河童の絵を描いていたのかも知れません。

河童=オオサンショウウオ説、結構良いと思います。

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posted by 桜 真太郎 at 12:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | 妖怪・モンスター